言の葉の葛篭

本や映画や食べたもの飲んだもの、なんでも記録帳です。ゆるゆるやります。

”アドルフ”の名を持つ3人の男たちの数奇な人生

梅雨かっ!!

ってくらい、雨続きですね…元気な太陽はどこいったのでしょう?

 

長雨になりますと出かけるのも億劫になりますよね。

そんな時、家に引きこもってマンガをイッキ読み!というのは如何でしょうか?

 

というわけで、今日はイッキ読みにおススメのマンガをご紹介します。

突然の超名作ですが…私の周りに読んでる人が少なくて衝撃を受けて、

多方面におススメしまくっています。大好き。

そして読み出したら止まらない名作です。

手塚治虫の描く大人向け歴史的ヒューマンドラマ

tezukaosamu.net

この作品は、ずっと前からわが家にありました。

しかも、ハードカバー。

話を聞くと、母が買ったのだそうです。

 

小学生の時、「ブラックジャック」と「どろろ」にはまり、

家で見つけた「アドルフに告ぐ」も手に取りました。

 

が、当然、読んでも全く分からない。1冊読みきらずに挫折。

(むしろ小学生でこれが超面白いとか言ったらそれはものすごく変な子だと思う…)

 

そして、その後はなかなか手が出せずにいましたが、

大学を卒業した歳に再チャレンジしたら…面白かったんですよね!

 

ストーリーを公式サイトとWikiから一部拝借。ちょっと書き換え。

1983年イスラエル。1人の日本人男性がひっそりと墓地の一角に佇み、ある墓の前に花を供えた。彼の名は峠草平。40年前、3人の「アドルフ」に出会い、そしてその数奇な運命に立ち会うことになった彼は、全ての終わりを見届けた今、その記録を1冊の本として綴ろうとしていた。

1936年、ベルリンオリンピックの取材でドイツにきていた峠草平は、取材中にドイツ留学中の弟が殺されてしまいます。
その謎を解こうとするうち、やがて弟が殺された理由はアドルフ・ヒットラーの重大な秘密を文書にして日本へ送ったためであることが明らかになってきます。

(中略)

一方、神戸に住むドイツ総領事館員のヴォルフガング・カウフマンも、本国からの指令を受けて、その文書の行方を追っていました。
カウフマンにはアドルフという息子がいました。
カウフマンは息子を国粋主義者として育てようとしていましたが、アドルフは、自分と同名のユダヤ人アドルフ・カミルと親友だったため、ユダヤ人を殺してもいいと教えるナチスドイツの考え方には反発を感じていました。
けれども、アドルフ・ヒットラーという独裁者が支配する恐怖の時代に、ふたりのアドルフの運命は大きくねじ曲げられていくのでした。  

 

アドルフ・ヒットラー、アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミル。

この3人の”アドルフ”が、この作品のキーパーソンです。

特に、アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミルの2人。

結びつき、離れ、ぶつかり合い……と、時代に翻弄され、

最後には憎しみ合うまでの人間模様が描かれています。

 

……が、そう思って読み始めると、作品の最初は全くアドルフが出てこないので要注意。

最初は、語り部(狂言回し)の役割である峠草平が、自分の弟の死の謎を解くために奔走する章からスタートします。

この導入部分が、また巧妙で、ミステリー調でグイグイ引き込まれるのです。

そして、弟の死の謎から、気が付くとアドルフへと話が繋がっていきます。

 

濃密なストーリーとキャラクター設定

この作品では、一人一人のキャラクターの濃さも特長の1つ。

正直、最後はもろもろな事情のもと結末を迫られたらしく(そのあたりはWikiとかで解説があります)

かなり詰め込んで未消化な部分もあったりするのですが、

しかしながらこれだけ濃いキャラクターたちを1つの作品として纏め上げるのはさすがとしか。

それでいて、軸はしっかりぶれないのです。

これは、最初のうちにかなり緻密に設定ができていないと、難しいのではないかと思います。

彼の頭の中の設定資料を見てみたいです、本当に。

最初からどのくらいストーリーが出来上がっていたのか、どのキャラクターがどこで絡んでくるのか、どこまで計算していたのか。

 

****

読後は、大きな波に飲み込まれた気持ちになります。

私の場合は、達成感もありました。

そのくらい、とにかく”濃い”のです。

そして今でも、読むたびに新しい発見があったり、感想が変わったりします。

最初はストーリーに落とされないように主軸を追う、2度目以降に、やっと脇を固めているキャラクターや裏で起こっているであろうストーリーも想像しながら見ることができるようになる。

何回読んでも、飽きることがありません。

 

書いているうちに、また読みたくなってきました。

 

皆さん、長雨でうんざりしたら、超大作を読んで作品の中に出かけてみては如何ですか?